飼い犬に手を噛まれまして
水上船に乗って、展望台にのぼって、観光をしてから、安いビジネスホテルを見つけた。日本人向けの観光案内所もあったし、観光シーズンじゃないから、部屋は簡単に見つかった。もともと後先考えずに行動して後悔するほうだけど、よく考えたら、この旅行は私の人生の中でも断トツにかなり無謀だ。ホテルの無料インターネット専用パソコンを借りて帰りの航空チケットの予約を確認する。
あまり長居はできないのが残念だ。ワンコとも相談して明日の夜のチケットにしてある。
それまでに何回も深陽さんに会いに行ってみよう。ワンコもそれでいいって約束してくれたし、大丈夫だよね。
「はあ……」
レストランは敷居が高くて、ファーストフードで食事をした。部屋に入ると「疲れました」とベッドに倒れてそのまま寝ちゃったワンコ。恋も仕事も何もかも上手くいかない中、きっと色んな不安と戦ってる。
絶対、絶対、深陽さんはワンコを待ってると思ったのに……見当はずれだったら、ワンコはこのままずっと私に依存し続けるつもりかな?
ワンコと、先輩……
一度は先輩を選んだはずなのに、ワンコもほっとけないなんて、意志が弱すぎる。
先輩が好きなのに……不憫なワンコを一人には出来ない。
ホテルのロビーで携帯電話の電源を入れて先輩の番号を押した。
先輩の声が聞きたい……今ここに先輩がいたら、何か素敵なアイデアを考えて笑ってくれたかなぁ。