飼い犬に手を噛まれまして


『もしもし、紅巴?』

「先輩……本当に海外で携帯電話って通じるんですね……」


 ヤバい。声聞いただけで、泣きそうだ……


『当たり前だろ。地球の周りに何機の衛星が飛んでると思ってんだよ』


 それでも先輩の声が遠い。手が届かない距離。

『副社長は?』

「今、部屋で寝てます。先輩……深陽さんには会えませんでした。ワンコと深陽さんは完全に終わったわけじゃないって本気で信じていたんですけど……」

 通話口から先輩の苦笑いが聞こえる。



「私、絶対にあの二人は上手くいくって思ってたんですけどダメでした。明日の夜の飛行機で帰りますね。いいホテルもみつかったし、マーライオン見たり観光までしちゃいました」



< 345 / 488 >

この作品をシェア

pagetop