飼い犬に手を噛まれまして


 昨夜は、先輩のことばかり考えてなかなか眠れなかった。


 もし、本当にあの郡司先輩が私を気にしてくれていたら?


 ううん、そんなことない。あの場の雰囲気でそう言ってくれただけだ……


 でも、あの時の先輩は何だか真剣だった。

 けど、あんな事に……先輩は慣れているのかもしれない。モデルさんとかを相手にしているんだし……


 そんなことを、ウザいくらいに何回も何回も繰り返して、結局先輩の考えてることがわからないで、悩むだけだった。



「手っ取り早いのは、その郡司先輩が仲がいいっていうデザイン課の須田さんだか山咲さんに、それとなく訊いてみるのがいいんじゃない?」


「どうやって?」


「郡司先輩、最近気になってる女の子いるんですかね? って単刀直入に」


「そんなことできないよ! それじゃ、私が郡司先輩に気があるのバレバレじゃない」

「ないの? その気」


「その気……?」



 朋菜がフォークを置いて真剣な顔をした。



「いい? 紅巴。正直にいうと、私たちもうすぐ三十じゃない?」

「うん……」



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