飼い犬に手を噛まれまして


「俺こそ、突っ走ってごめん。最初から深陽だけを見てもっと落ち着いて行動すればよかった」



 ちょっと寂しい? ううん、すごく寂しいかも……
 ワンコが元の飼い主さんを見つけちゃった。私の役目は、もうおしまいだ。



「紅巴さん……」

 深陽さんが私の存在に気がついて、慌てて頭を下げた。


「俺の恩人だよ」

「星椰がお世話になりました」


「深陽さん。ワンコのチケット、キャンセルしときます。荷物、ここ置いとくね。それでいい?」


「星梛は私が責任もって面倒みます」


「うん、それが一番だね」

 深陽さんの肩にそえられたままのワンコの手。もう離しちゃダメだよ。




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