飼い犬に手を噛まれまして
「今夜は、あのベッドで抱かれるって……想像してるから、そんな誘ってる目するんだろ?」
「やだ……違う……あの、先輩どうしてこんな用意してあるんですか?」
「ああ、それは……」
沢山のフラッシュを浴びてきた、その綺麗な顔がニッと意地悪に微笑んだ。先輩が何かを企んでいる時の顔だ。
腰を引き寄せられて、先輩とぴったりと密着すると……ああ、本当にあのバラの花びらの中で抱かれるんだ、と考えてしまう。
嫌いじゃない……拒めない……相手が先輩だから……色んな想像をしちゃうんだ。
「紅巴にお礼をしようと思ってた。俺に力を与えてくれて、ありがとう。今回、もし受賞できなかったとしても、俺は全力であの作品を作れたし、それは全部紅巴のおかげなんだ。紅巴の一生懸命な姿みてきたから俺も頑張れた」
「え? 私ですか……」
「そう、紅巴が与えてくれた」
「そんなことない。先輩が凄いから……
でも、おめでとう。流石だなぁと思った。先輩頑張ってる姿、最高にかっこよかった」
「あ、やばいな……今すぐ押し倒したくなってきた。謙虚な姿勢はいいけど、加虐心煽られるんだよな」
「な、な、な、そんな物騒なこと言わないで!」
先輩は、ごほんと咳払いをした。
「でも、その前に紅巴に話たいことがある。俺たちの将来を決める大事な話」
「大事な話って……?」