飼い犬に手を噛まれまして
「紅巴さんは一人で帰っちゃったし……空港でキスしてる人なんて腐るほどいるよ」
そう言うと、星椰は私の腰と頭に手を回して、逃げられないようにガッチリと体を捕まえられてしまう。
逃げ道のない一方的なキス。
何度も何度も繰り返されるキス。
「みはる……はやく一つになりたい。ねえ、二人きりになれる所に連れて行って……」
薄く唇を開いて、星椰の舌を自ら招いてしまう。
ずっとこうしていたい……なんて、絶対ダメなのに
───────私は、彼を拒めない。
「ターミナルに車待たせてるわ。私、一人暮らししてるから…………よかったら、部屋に来る?」
「うん、行く」
素直に頷く彼が恨めしい。これじゃあ、また手放すのが辛くなる。
あんなに辛い思いしたばかりなのに、私はまた同じ過ちを繰り返す。