飼い犬に手を噛まれまして

「あっ! ヤバい、お昼休みあと五分で終わっちゃう! 萌子先輩に怒られちゃうよ」


「もう、こんな時間なんだ? デザートきてないね」


「ごめん、朋菜! デザート、私の分も食べちゃっていいからね! また連絡するね!」




 ランチ代を置いて、店を出た。自分の話ばかりして、朋菜の話をちょっとしか聞いてあげられなかった。

 朋菜とランチする時は、大抵朋菜の話題ばかりになる。

 昨日までの私には報告するような事がなかった。だけど、今日は報告だけでランチ時間の半分以上使ってしまった。



 急いで庶務室に入る。萌子先輩は、まだランチから戻ってきていない。


「よし、セーフ!」



 マウスウォッシュでうがいして、リップグロスをつける。

 そして、自分の席に座ってパソコンの電源を入れた。


 お昼休みあとのパソコン仕事って一番眠くなるんだよね……



「茅野」


「はーい」



 庶務室の入り口から、郡司先輩が顔を覗かせた。色素の薄い髪と同じ色をした瞳が私を見てる。

 それだけで、眠気が飛んだ。



「一人か? 今、時間ある?」


「は、はい!」





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