飼い犬に手を噛まれまして
「星梛、本当に日本帰らなくていいの? ご両親心配なさってるんじゃない?」
「いいんだよ。親父は俺が嫌いだから、俺がいなきゃ別の奴に会社継がせるよ。
俺がいたから話がややこしくなってただけだから……それに探しに来ないだろ?」
たしかに……SKMコーポレーションの動きは気をつけているけど、星梛がここにいても大した動向はない。
「親父は諦めたんだよ。頭が悪い奴は大嫌いだ、ってはっきり言われたし」
「星梛は、そんなんじゃない……」
「いいよ、慰めてもらう必要ない。今こうして、みはると一緒にいられるのは、親父に嫌われてるからだし、ちょうどいいよ」
でも、星梛は嫌いなわけじゃないでしょ? と言いたかったのに、星梛の目がそれを拒む。
「終わったよ」
「ありがとう、みはる」