飼い犬に手を噛まれまして
ひゃぁああ、郡司先輩だ!
生郡司先輩が私に会いに来た!
ドキドキ高鳴る胸を押さえる。透明感ある綺麗な薄い唇……あの唇が昨日、私と……
「茅野、今夜から出張で五日間留守にする」
「はい」
先輩、わざわざ出張の報告に来てくれたんだ……五日間も会えないのは寂しいけど、出張前にこうして会いに来てくれたのは嬉しい。
「帰ってきて直ぐに、シカゴの報告会をしなきゃならないんだ。ここに必要なもののリストを作っておいたから、揃えておいて欲しい」
「は、はい」
先輩は淡々とした話方をする。
そうだよね。仕事中だもん。
「大きなプレゼンも控えてる。なるべくこのリストに忠実に揃えといてくれよ? よろしくな」
「わかりました」
先輩はそれだけ伝えると満足そうに微笑み、庶務室から出ていってしまった。