飼い犬に手を噛まれまして

飼い犬に舐められまして



─────「俺、日本に帰ることにしたから」


「え? いつ」


「今日」



 星梛は、小さなショルダーバックに自分の荷物を詰め込んでいた。



 なんで突然?

 まだビザの期限はあるでしょ?
 
 それって、もう会えないの?

 私たち、別れるってこと?



 疑問が次から次に溢れだすのに、私にできたことは拳を握りしめたことだけだ。


「みはるは、もう答えだしてくれた。よくわかったから」


 小さなショルダーバックなのに、中身はスカスカだ。それだけ星梛の荷物は少ない。


「そんな顔しないで、みはる。辛くなる」



 別れだ……私、星梛にふられる。


 星梛が出した答えは、別れ。





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