飼い犬に手を噛まれまして
────「三度目の正直なんてことわざを信じているわけじゃない」
一人ずつ行き渡った紅茶を手に取りながら、父の独壇場と化したリビングで、胸をやきもきさせていた。
やきもきしているのは、私だけみたいだ。
「星梛くんが最初に私を訪れてきたのは、みはるがまだ学生だった頃で『挨拶だけでも』と頭を下げた好青年に、心底ほっとしたが、彼の名前を聞いた途端、色んなことを考えてしまってね。
交際は認められない。と、彼を追い返した」
「星梛、お父さんに会いに行ってたの?」
星梛はこくんと頷く。
だから、お父さんは私たちのこと知ってたんだ……未来がないんじゃないかって心配してたんだ……
「二回目は、彼はうちの入社試験を受けに来た」
「星梛っ?」
悲鳴に近い絶叫を星梛は、へへっと笑ってやり過ごした。
「もちろん、不採用だ。何を考えているんだ、君もご両親を大切にしなさいと追い返した」