飼い犬に手を噛まれまして

 母は、まあ可笑しいと、クツクツ笑っていた。


「三度目は、ちょうど一週間前。信じてくれ、と土下座した星梛くんに戸惑った。

 これがSKMコーポレーションとコンテスト出品作品だ、自分はスパイでも何でもするから、ただ、みはると一緒にいたい……と」



 テーブルの上には、ブルーのUSBメモリースティックが転がった。

 父はそれをもう一度掴んでキャップを外すと紅茶の中に落とした。


「誓って見ていないし、漏洩もしていない」


 星梛は、紅茶に浮かんだメモリースティックを眺めていた。
< 423 / 488 >

この作品をシェア

pagetop