飼い犬に手を噛まれまして
ワンコは、むうっと唇を尖らせた。
「お邪魔します。これ少しですけど、シンガポールのお土産です。それと紅巴さんが好きだって星梛が言うからプッチンプリン」
「わあ、ありがとう! プッチンプリンのイチゴ味もある! 嬉しい」
シンガポールのお土産とプッチンプリンを受け取って、リビングに案内する。
結婚してからも、私たちは先輩のマンションに住み続けていた。広いし、立地もいいし、後で知ったんだけど分譲マンションだったから。
結婚前はリビングにあった先輩のワークデスクは、北側の部屋に移動して、ダイニングテーブルを大きなものに買い替えた。
先輩の部屋は殺風景で無駄なものがなくて、それはそれでセンスよく必要最低限のものが揃えられていたけど、私が住むようになってからは、ちょっと家庭的になってしまった。
もちろん、先輩はそんなことに文句言う人じゃないけど、初めてきた時感じたモデルルームみたいな部屋も懐かしいな。