飼い犬に手を噛まれまして


 並んで座るワンコとみはるさん。


 このツーショットを間近でじっくり
見るのは、はじめてだ。


 だけど、なんて微笑ましい二人なんだろう。


 ワンコは、一緒懸命みはるさんの顔を見て話すし、みはるさんは少し照れくさそうに、だけどちらっとワンコに目を向けながら話す。



「ごめんね、先に乾杯してて、料理があとちょっとで完成なんだ」


 先輩が邪魔したからだ。だけど当の本人は知らん顔して、ワンコとみはるさんに乾杯用のシャンパンをつぐ。自分のコップには、炭酸水。


「紅巴さん、手伝いましょうか?」


「ううん、大丈夫。さっき日本に着いたばかりでしょ? みはるさんは、座ってて」



 シンガポールに住んでいるのに、全然日に焼けていない。みはるさんは、白くて細い体に似合う上品なワンピースを着ている。


 すごく高そうだし、汚しちゃったら大変。



「俺が手伝います。ほら、紅巴さん行こ」



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