飼い犬に手を噛まれまして


 先輩が何か言いたそうに、こっちを見てたけど相変わらず強引なワンコは、私の肩を押す。


「ちょっと! あの二人、大丈夫なの? 商売敵でしょ?」


「大丈夫でしょ、大人だし。それより、シンガポールでは俺が家事やってるから、みはるに皿でも割られる方が心配です。

 何をすればいいですか?」



 ゆで卵のから剥きをお願いすると、ワンコは手際よく動く。



「ワンコは、シンガポールでもワンコやってるんだ?」


「失礼だなー、学生なんだからしょうがないんですよ!

 それに、もう紅巴さんのワンコじゃないんだから星梛て呼んでくれてたじゃないですか」


「ああ、ごめん、つい」



 アハハと、笑うと、ワンコがぐっと顔を近づけてきた。



「次、ワンコて呼んだらお仕置きです」



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