飼い犬に手を噛まれまして

「でもメールしても、返事遅いんですよねー。冷たくなりましたよねー紅巴さん」


 ワンコがしゅんとしながら、卵のからを剥く。


「だ、だ、だって! 星梛が、パソコンにメールくれるからだよ。携帯ならすぐに気がつくけど、パソコンはたまにしか見ないから」


「俺、携帯持ってないから」



 つるんとした卵を置いてワンコは真面目な顔をして、じっと見つめてくる。



 や、やめて!



 この真っ直ぐな瞳に私はすごく弱い。



「あ、今日はキスマーク大量につけてないんですね。結婚指輪してるからかなー? ヤキモチ妬きの旦那さん持つと大変ですねー」


 
 ワンコが私の鎖骨を指でトンと叩く。


 助けて! 先輩! とリビングを見ると、みはるさんと先輩が何かの雑誌を見ながら猛烈に議論していて、こっちなんて気にしていない。






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