飼い犬に手を噛まれまして


「この卵は、サラダ用ですか? だったら潰してマヨネーズに和えてもいい? みはるが、好きだから」



「う、うん。いいよ」



 ワンコは何事もなかったかのように、「紅巴さんち食器とかも超お洒落!」 と声をあげた。



 完敗。



 私、この子には一生勝てない気がした。





─────「いただきまーす」



 四人で食事するのも、はじめてのことで、みはるさんがすごく嬉しそうにしてくれたのが、私も嬉しい。


「紅巴さん、お料理、上手ですねー」


 それに反応したのは先輩だった。



「誰かさんのせいで会社をクビになったから、紅巴は料理教室に通ってるんだよ。

 な? いずれは、ここで料理教室でも開けるくらいに最近はどんどん腕前あげてるんだ。ま、感謝してるよ。おかげで俺は毎日美味い料理にありつける」



 先輩の棘のある発言にギョッとしていると……


「ああ、たしかに紅巴さんは前から料理上手でしたよね。

 寝坊した俺に、パパっと朝ご飯作ってくれたりしてましたよねー、紅巴さん」



 そ、そこ対抗するところですかーっ?





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