飼い犬に手を噛まれまして


 先輩は、余裕たっぷりに目を細めた。


「へー、そんなこともあったんだ」と受け止める。


 そうだよね、流石に先輩は大人だ。ワンコの挑発にはのらないんだね。


 すっと長い足を組む。


「みはるさんも、遠慮しないで食べて」


「はい、郡司さんて噂通りの方ですね。でも来年は負けませんよ! イーストエージェンシーは、アジアでの知名度もどんどんあげていますからね」



 先輩の横顔をうっとりと見つめる。すっとグラスを持つ姿もまた素敵。




「あーっ! 先輩っ!! だめーっ!」


「ん?」


 ゴクリと喉を鳴らした先輩。



「それ、私のシャンパンだよ! アルコールはいってる!」


 ワンコとみはるさんは、目を丸くして私たちを交互に見つめる。


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