飼い犬に手を噛まれまして
せ、先輩! 全然、余裕たっぷりな大人じゃないし!
「紅巴は、俺のだー」と叫びながら背中に額をつけて、先輩の長い腕が私をがんじがらめにした。
ワンコは、ヒャヒャッと変な笑い声をあげてお腹を抱えるし、みはるさんは「郡司周渡の弱点ね……使えるわ」と何かを企んでる顔をする。
「ちょっと……二人ともっ!」
「アハハハハ! あー腹が捩れちゃいますよ! 紅巴さん、愛されてますねー」
「笑ってないでよー!」
先輩はずるりと脱力して、私の膝に頭を預けた。