飼い犬に手を噛まれまして

「お前なんか……嫌いだ……勝手にいなくなって…………たった三日の秘書を巻き込みやがって……」



「周渡……」



 愛しい人の赤らんだ横顔がたまらなく可愛い。

 薄茶色の髪をさらりと撫でて、熱くなった頬をちょんと指で突っついた。瞳は閉じていても、譫言みたいに呟く。




「……社長だって本当は、落ち込んでるんだ。強くて狡賢い社長だけど、慕ってる俺たちにはわかる…………自分勝手な恋愛貫くなら、男の意地みせろ…………じゃなきゃ俺は絶対、ゆるさな……」



 先輩はそこまで言って、すぅと眠りに落ちた。








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