飼い犬に手を噛まれまして


 酔っても郡司先輩は、郡司先輩だ。


 最後まで堂々としていて男らしい。



 ワンコは笑うのをとっくにやめていて、シャンパンをグラスの中でくるくると回していた。



「みはるの両親とは、この後会う約束もしてるんですけどね……」と言い訳みたいな独り言を呟く。



 みはるさんは、お皿にのせた卵サラダを完食するとフォークを置いた。



「うちの親は平気よ。星梛のこと気に入っているんだもの。顔だけでも、見せてくればいいじゃない」


 冷たいようだけど、ワンコは俯いて笑った。



「みはるが一緒に行ってくれなきゃ、やだ」


「またそうやって……」


 みはるさんの苦労がよく分かるから可笑しくなっちゃう。








< 445 / 488 >

この作品をシェア

pagetop