飼い犬に手を噛まれまして


 甘く私を溶かしてくれるキス。



 酔いしれるように夢をみさせてくれるキス。



 たまに乱暴に荒々しくて、でも最後には必ず優しくなるキス。




「紅巴……、もう無理……」


「え? ごめん、私が下手だから?」


「何が?」


「キスが下手だから、もう無理なの?」



 先輩が怠そうに起き上がる。頭がふらふらするのか、そのまま背もたれにもたれかかってため息をついた。



「み、水持ってこようか? ちょっと待ってて」


 キッチンに逃げ込もうとすると、その手を掴まれる。



「逃げるな、もう無理」


「ひゃっ!」


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