飼い犬に手を噛まれまして
これ以上聞かない方がいい。私、きっと傷つく。それなのに、好奇心を止められない。
「和香がどうかしましたっけ?」
「郡司に惚れてるって話だよ」
「あー……」
私って、最低だ。知っているふりして、山咲さんに口ぶりを合わせる。
「昨日の飲み会だって、姫がどうしてもって言うから俺たちが郡司を無理矢理呼び出したし。シカゴ出張だって、元々イベントの主催者は郡司だけを指名してきたんだ。それなのに姫が課長に頼み込んで同行することになったんだよ」
「和香らしいですよね、私には真似できないけど……やっぱり和香はカッコいいと思います」
山咲さんは曖昧に笑った。私は、今すぐ泣き出したい気持ちだった。
「そうだよな。でも、その行動力をあまり面白くないって考えてる人もいるんだよ。郡司は女にだらしないけど、あれはあれでモテるから。正直、心配だよ。
姫に茅野ちゃんみたいな友達がいて、昨日はちょっと安心した」
「いえ……私は……」
郡司先輩と一緒にシカゴに行った和香に嫉妬している。
ほんと、最低。