飼い犬に手を噛まれまして
先輩がペーパーナイフを器用に扱って梱包をとくと、中からオレンジ色のカラフルなお菓子の詰め合わせが出てきた。
「ほら、紅巴にだってさ」
ジャックオーランタンの可愛いメッセージガードは、私宛てになってる。
『クレハさんのクレハて漢字がわからなくて郡司周渡宛てに小包をだしました。誤解させたらごめんなさい。日本でお世話になった人たちに毎年プレゼントしているお菓子でーす』
って、エリナさん……私、お世話なんてしてないのにプレゼント用意してくれたんだ……
つまらない嫉妬しちゃったかなぁ、と顔をあげると不敵に微笑む旦那様。
「紅巴、トリックオアトリート」
腕を組んでクスクスと笑う先輩は、何かを企んだような目をしてる。
「甘いお菓子くれないと、悪戯する」
「お、お菓子?」
カボチャ型のバスケットに入ったお菓子。その中に入っているチョコレートを一つ摘まんで先輩に差し出した。
「トリックオアトリート」
「えー? これじゃダメなの? えーっと、じゃあこのマシュマロ!」
「ダメー、トリックオアトリート」
一回のトリックオアトリートごとに先輩が少しずつ近づいてきて、あっという間に私たちはバスケットを挟んで密着した。