飼い犬に手を噛まれまして
耳元で囁かれたかすれた声、熱い吐息が胸を締め付けられるくらいに切ない。
ずっと待ってるんだ……元カノさんが帰ってくるのを信じて……
「好きだ……俺はずっと深陽だけを好きだから……」
「えっ? あ、ちょっとダメー」
景色がぐるんと回転して、天井が見えた。私の胸に顔をうずめたワンコ。手は好き勝手に私の体を弄る。
「待って! 勘違いしてる! 私は、深陽さんじゃないっ!」
ぎゃー! 冗談じゃない!
勘違いされて襲われるのは、嫌だ! いくらなんでも、嫌だっ!
それに彼はもっと嫌だと思う。深陽さんじゃない女なんて、抱きたくないはずだ。
ワンコは胸を散々好き勝手に触ってそれに飽きるとシャツの中に侵入してきた。彼の手が熱い。それから首筋にあたる唇も熱い。舌が直接皮膚を刺激するから、それから逃げようともがく。
「起きて! 坂元くん! 私、違うから!」