飼い犬に手を噛まれまして
「うん、何か使い道があったら使ってね。…………って言っても困るよね? 冗談だよ。捨てちゃてもいいよ。断れなくて買っちゃっただけなの」
ワンコは、ポーンとボールを天井にむかって投げた。落ちてきたそれを器用にキャッチする。
「使い道思いつきました! 茅野さん、公園行きましょう!」
「公園?」
「はい! 支度してください! はやく」
「えっ? ええっ?」
すごく楽しいこと閃いた子供みたいにワンコは意気揚々と着替えをはじめた。
「わっ? 着替えは見えないとこでしてよ!」
「茅野さん、赤面しないでくださいよ。こっちが恥ずかしい」
「ば、ばかっ!」
赤面するに決まってるよ。さっき、あんなことがあったばかりなのに!
早まる心臓を押さえつけながら、とにかくワンコに従うことにした。