飼い犬に手を噛まれまして
隣人はついに「うぅっ」と嗚咽を漏らした。ああ、だめだ、ほっとけない。
「いいよ。一晩だけなら泊めてあげるから」
あんまりに可哀想で、私は彼を拾うことにした。一晩だけだし、ご近所のよしみだ。
それに、彼は悪い人には見えない。男の子にしては可愛い顔をしているし、服装も清潔感がある。だから、大丈夫だよね。
「本当ですかぁ? 茅野さん!」
「本当にいいよ。部屋は二つあるし、友達がよく泊まりにくるから、お布団もあるし。……あ、でも干してないけど、気にしないよね?」
「ありがとうございます! 本当に、ありがとうございます! 茅野さん優しそうなお姉さんだなって、ずっと思ってました! 俺のことは犬だと思ってください。いい子にします」
「あはは……犬って」
すごい喜び方……。
こうして、私は軽い気持ちで犬を拾いました。
この事を、後で何度も何度も何度も何度も後悔するとは知らずに────