飼い犬に手を噛まれまして
「この公園にも、元カノさんとよく来てたの?」
ワンコは首を振った。
「ここへは、初めて来ました。彼女は俺とボール遊びはしてくれませんでした」
「そうなんだぁ……私は飼い主さんだからね」
「あっ? そういう意味で、このボール買ったんですか?」
「アハハ、うんバレちゃった」
「茅野さん、酷いや。マジで犬扱いかよ」
「だって、自分から言い出したでしょ?」
「そうだけど……」
芝生に転がったままの私に、ワンコが覆い被さるように顔を覗いてきた。
「いつか、飼い犬に手を噛まれるなんてことにならないようにしてくださいね?」
「えっ?」
ワンコの表情が逆光でよく見えない。
私の両脇に置かれた手、ゆったりと近づく表情の読み取れない顔。
「な、なに?」