飼い犬に手を噛まれまして

 大きなテレビが置いてある部屋には、小さなテーブルが一つだけ置いてある。テーブルに合わせて、雑貨屋で買ったクッションみたいな座布団が二つ。その一つに朋菜が座り、もう一つには私が、ワンコは床で胡座をかいた。


「ワンコ、可愛いね……紅巴」


「そ……そう? ありがとう、ってお礼言うのも変だけど」


 ワンコは苦笑いした。


「どこ行ってたの?」


「うん、公園でボール遊びして、ランチして、買い物してた。ね?」


「はい……」



 なんで、私たちは朋菜に訊問されなきゃならないんだろう。二人の関係は健全です! と主張しなくちゃいけない雰囲気だ。



「先輩は?」

「シカゴ出張いったよ」


「ふーん」


 気まずい沈黙。ワンコが、明るい声で「彼氏さん、出張ですか!」と言ったけど、逆効果だった。




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