飼い犬に手を噛まれまして
「タカシさんは、何て言ったの? いつも朋菜の味方してくれてたよね?」
朋菜の涙は止まらない。悔しそうに握りしめられた手が痛々しい。
「それが……子供はいずれ欲しいし、受診だけしてみるのも悪くないんじゃないか? って」
うーん。難しいな。デリケートな問題だけに、なんて言ってあげるのが一番いいんだろう。
「私のこと不良品扱いしてるんだよ……産婦人科なんて考えただけでも嫌ぁ」
「そんなことないよ! でも、タカシさんも先生だし、そういう意味で気軽に受診て言っちゃただけだよ」
「そんなの紅巴には、わからないでしょ! タカシさんもお義母さんも、私のこと子供産む道具にしか考えてないんだからっ!」
「朋菜……」
困ったな。とりあえず、愚痴に付き合ってあげるしかないよね。
「あの……意見してもいいですか?」
ワンコが恐る恐る手をあげていた。