飼い犬に手を噛まれまして
「なに? 変なこと言わないでよね」と釘をさすと、ワンコは飼い主を無視して話はじめた。
「朋菜さんには、悪いんですけど僕は旦那さんが可哀相すぎると思います」
「坂元くんっ?」
「だって、そうじゃないですか。こんな話、僕や茅野さんにしたって答えなんて出ないのわかるでしょ?
結婚して、子供を持ちたいと言ってくれる方がいるのに、その人と本気で腹わって話合えばいいじゃないですか。
旦那さんが可哀相ですよ」
ワンコ……
非の打ち所がなさすぎるご意見です。
朋菜は、キョトンとした涙目でワンコをじっと見つめた。
「朋菜さん、すごい綺麗な方だし、旦那さんはきっと朋菜さんの事を大切に思っているはずです。
人生経験少ないんで嫁姑対決の熾烈さはなんとも言えませんが、あっちは先に死ぬんですよ。いずれ朋菜さんの天下がきますって」
あっちは先に死ぬ……って?
「坂元くん!」
「あ、すみません。酷いこと言いました?」
「言い過ぎだよ!」