飼い犬に手を噛まれまして


「まって、片付けないと……」


「そんな面倒くさいこと、明日やりましょう。俺も、眠くなってきた……」


 ワンコは、私を抱きしめたまま自分も横になる。すぐ目の前にあるワンコの可愛い顔……暗がりで、ますます色っぽさが増すのはどうしてなのか。


「本当にこのまま寝るの?」
 
「寝ますよ……茅野さんの彼氏さん冷たい男なんですね。休日に一回も連絡してこないなんて……」


 一度も鳴らずに放置されてる携帯電話を指さされた。


「彼氏じゃないよ」

「へえ……」


「彼氏なんてもう何年もいない。会社の気になってた先輩に『可愛い』って言われただけなの……それなのに、私、勝手に浮かれてた。バカみたいでしょ?」


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