飼い犬に手を噛まれまして


────朝、迎えにきたタカシさんに朋菜をお願いした。歯医者さんていう職業がすごく納得できる容姿をしたタカシさん。シルバーフレームの眼鏡が知的な顔にぴったりだ。



「タカシさん、頭痛いー」


「大丈夫? ほら、紅巴さんにお礼言って」


「紅巴、ありがと。ワンコにもよろしくね」


「うん、またね」


 玄関先で手を振って見送りをする。タカシさんは何度も振り返って頭を下げてくれた。


「はぁ」


 ワンコは、まだ寝てる。散らかった部屋を見回してガッカリだ。二日間しかない貴重な休みを、掃除に費やすしかないだろう。



「紅巴さん……」


「おはよ、起きたの?」


 今朝は彼の腕の中で目覚めた。しっかりと一晩抱きしめられた私は、なんだか心も体もほくほくしていた。



「今、何時ですか……?」


「九時半だよ。朋菜、今帰った」



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