飼い犬に手を噛まれまして


「何、浮かれてんのよ」


 お尻をパシンと叩かれて、私は現実世界に引き戻された。


「萌子先輩! おはようございます!」


 この先輩は、同じ課の超ウルトラスーパーミラクルなお局様だ。

 アラフォーもそろそろ末期を迎え「あたしは結婚しなかったんじゃないわよ? したくなかったのよ」が口癖だ。

 多ければ週に四回。最低でも週に一回は誰かに訊かれたわけでもなく説明する。



 でも、それは嘘じゃないんだと思う。


 私たちは、うちの会社の庶務課勤務だ。地方への転勤はない、一般職。華やかな広告代理店勤務とはいえ、意外と地味な仕事ばかり。

 
 でも、実態は庶務課だろうと、私たちは広告代理店勤務の丸の内OLなんだ。デザインのデの字も関係ない部署にいるけど、そこはデザイン課だろうと同じ括りだ。



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