【短篇】幼なじみ
食事の片付けも終えて、ちょうど九時半を過ぎたころ。


お母さん達は、帰ってくる気配すらない。


私は、そろそろお風呂入りたい…なんてことを考えている。


だけど、藤もいるし。


普段何気なく口にするようなことが、できない。

「…ふ…ふ…ふ…ふ……」


「ふ。が、どうしたの??」


隣に座っている藤に、聞かれるけど喉が空気を運ばない。


「おお~い?蒼??」


「…藤…お風呂…入る??」


やっとのことで、途切れ途切れの言葉を紡ぐ。


藤は、頬を朱く染めてる。


もしかして、藤も意識してくれたの??


私に??


なんて、自惚れながらも「藤?」って尋ねる。


「えへ。なんか俺、ソーゾーしちゃった。あおっぺと、風呂入るの。」


藤は、甘く笑って眼鏡の中心を中指で上げた。
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