華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
「この間の電話、本気ですか。」
「当たり前です…。」
「未也美さん、」
「………。」
「僕を、見てください。」
「………。」
彼女は頑なに視線を合わせようとはしなかった。
「……俺を見て、もう一回言って見てください。」
「……っ、」
顔を下にむけて、彼女はふるふると首を振った。
「ごめん、なさい……」
「未也美さん…」
「ダメなの、嘉…。わたし…家を裏切れないのよ…怖いの。」
「そんなの…」
「もう、話し掛けないで。迷惑よ…」
眉をひそめて、今にも泣き出しそうな表情を見せた未也美さんは。
サッと立ち上がって人込みの中に戻っていった。