華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
“総長室”らしい奥まった部屋に運ばれた蓮士。
普段あまり使ってないと説明されたけれど、きちんと綺麗にしてあるのが見て取れる。
「…う……、…」
大きなベッドに寝かされた蓮士は絶えず小さなうめき声をあげていて。
何か夢でも見ているんだろうか。
「…ここにいても、しょうがないよ。部屋に戻ろう。」
「嘉……」
「楓、大丈夫だよ。」
「でも、こんな蓮見たことねぇ…!」
「…じゃあ、目を覚ますまで楓がここにいてくれる?」
「……うん。」
不安げに歪んだ楓の目からは今にも雫が落ちそうだ。
…そんなに、心配なのかしら?
確かにこんな風になった蓮士は普段からは想像できないし辛そうだけど。
楓が泣きそうになるほど?
「侑希、コーヒー飲む?」
「………ええ、ありがとう。」
部屋を出ながら尋ねてきた結都に笑みを向ける。
……考えても、仕方がない。