華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
私の体は大きな鼓動を携えたままベッドの傍に立ち尽くした。
蓮士を見下ろしているのは間違いなく私なのに、なにか違う。
端正な造りの顔は苦しそうに歪んでいて、額には汗が浮かんでいる。
寝ているとは言え、蓮士のこんな表情は見たこともないし想像したこともなかった。
だけど、この表情は不思議と蓮士に馴染んでいる気がした。
…私は、どこかでこの顔をした蓮士を見たことがある?
不意に、そんなことを急に思った。
何故だろう。
蓮士のことなんか、ここに来るまで知らなかったのに。
そんなに長く一緒にいるわけではないし、そんなに深く知ったわけでもない。
なのに、なぜか。
どうしようもなく懐かしいのだ。