華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
「ハナちゃ!」
…ああ、待ち望んでいたような、声。
「レン、くん…」
そう口にするのが精いっぱいで、その後が続かない。
助けて、なのか。会いたかった、なのか。
どれも当てはまるような当てはまらないような。
それすら考えることもできないような朦朧とした意識。
待ち望んだ少年は、誰かとつないでいた手を離してハナの元へと駆けて行った。
少女の様子には気が付いているのかいないのか、ニコニコと屈託なく笑ったままだ。
「こほっ、こほ……」
砂ぼこりが喉に刺さり、咳が出る。
もう、それだけで息が出来なくて、足に力が入らなくて、そのまま少女は膝をついた。