華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
記憶2
「早く。早く、僕の所へ戻っておいで。」
苦しそうに目を閉じている真白の少女を見つめている間、心の底から瞬きの時間すら惜しいと思う。
僕の勝手でこんなことになって、僕の勝手でこんなにつらい思いをさせている。
記憶がなければ―――あの、少女の今までのうちで一番辛かったころの、記憶がなければ。
彼女だけが持つ“白”が戻ってこないなんて、その時は考えもしなかった。
――あの時は、光にとられてしまうのが怖かったのだ。
今はもう、そんなことはどうでもいい。
ただただ、彼女の色を取り戻してほしい。
それから、僕は再び息を吹き返すのだ。