華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
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初めて安心を与えてくれた人がいなくなったと知って3日間。
少女は言葉の通り魂が抜けたように何も感じなくなった。
もともと感情の起伏は薄いほうだ。
その起伏すらなくなってしまえば、少女の容姿も相まって、まさに人形。
その様子は、母親も教育係も気味悪がった。
「……どこに、いってしまったの。」
あの人は。あの、冷たい人は。
私の世界に色を付けたあの人は。
その存在を知ってしまえば、知らなかったころにはもはや戻れない。
たった一目、見ただけだった。
だが、それだけで十分だったのだ。