華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
「え?」
少女には、彼が泣いている理由なんて分からない。
だけど、自分が、こんな顔になってしまうときは―――
「いたいの?たたかれたの?」
誰かに。自分よりもはるかに大きい大人に。
腕を振り上げられて、目を閉じる暇もないくらい急に。
目の前がちかちかするような、くらくらするような強い力で、叩かれたの?
痛い思いをしたの?
……だから、泣いているの?
「………わたしは、たたかないよ。」
そんなことは、しない。
だって、わたしはそんなことされたくないもの。
少女はまっすぐに彼を見て、自分の意思を伝えようとした。
「きみは……」
彼にはそれが伝わっただろうか?
伝わってないとしても、彼が自分を傷つけることはない。そう、確信していた。