華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
「華……。」
小さく彼が呟いて、自分の名前はもっともっと輝きを増した気がした。
彼が落とす言葉はすべて自分にはキラキラと輝いて聞こえる。
少女が嬉しそうに微笑んでいれば、あきとがそっと頬に触れた。
「痛い…?」
彼が触れた場所は、顔にある青あざ。
目が覚めてすぐに母親に叩かれたときにできたものだ。
3日前、になるが。少女の傷の治りは遅い。3日たってもまだ青く変色したままだ。
体にはもっと数えきれないくらい痣や傷があるが、それを彼に言う必要はないだろう。
「……あなたの手、冷たいね。」
「そうかな?」
「うん。」
冷たい。その冷たさが、とてもとても心地良い。