華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
「痛くないよ。あなたは、どこか痛いの?」
さっきまで、泣きそうだった。
その問いかけには答えないまま、彼は言った。
「……日陰に入ろうか。暑いでしょう?」
「大丈夫だよ?」
「赤くなってるよ、肌。」
そうだ。少女自身は自覚していないが、少女は本来、日に当たるべきではないのだ。
色素を持たないのだから、紫外線に対する抗体が極端に少ないのだ。
それに、少女の視界は晴れた日の中では非常に狭い。
今だって、彼のことしか見えていないのだ。
周りの様子なんて、光に紛れて見えない。
彼が、木陰に連れて行き、二人並んで腰を降ろした時だった。
ビュオオオオオオオ―――
砂埃が舞って、小さな石や砂が彼に当たる。
少女のことだけはきれいに避けて、だ。
「いたっ!!」
ひときわ大きな石が彼に当たって。
かすり傷だが、彼がケガをした。
「やめて!!!」
風が、風が怒っている。