華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
風がやんだことに、彼は困惑しているようだった。
先ほど風の話はしたが、理解はしてくれなかった。
再び、風のことを話し出す。
「風さんが、すこし怒ってたみたいなの。ごめんなさい。」
「風さんって…」
「風さんは、わたしを守ってくれるの。」
本当なんだよ、ということを伝えるため、彼の目を見て真剣に話す少女。
それでもやはり、彼は困惑しているようだった。
だけど、風はいつも――
「“人間は華を傷つけるから関わっちゃだめだよ”」
「え?」
「いつも、そう言ってる。たしかに、お母様も上野さんもわたしのことを叩くから、そうなんだと思う。でも、あなたはあの人達とは違う。…そうでしょう?」
真剣に話す少女のことを、彼も目をそらさず見ている。そして、真剣に聞いている。
―――きっと。彼ならわたしが何を言いたいのか、分かってくれる。
―――誰にも、言えなかった。
―――だけど、ずっとずっと、思っていた。