華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
少女の世界を色づけた彼は、暫くもしないうちに再び姿を消した。
2人の間だけに、約束を残していった。
少女はその約束を待ち、日々を生きることにした。
母親の暴力、暴言をさらりと受け流し、学習にも取り組んだ。
美しい言葉遣いや、所作。
“教科”の勉強はもちろん、そんなこともどんどん身につけた。
―――痛いなら、痛みを感じなければいい。
―――悲しいなら、その感情が無くなればいい。
―――辛いなら、耐えなければいい。
少女は瞬く間に変わっていった。
常におびえるようだった視線は段々と冷ややかなものへ。
涙ぐみがちだった瞳は、表情をなくした。
弱い鈴のようだった声は、凛とした芯のあるものへ変わっていった。