華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
その時は、刻一刻と近づいていた。
彼が姿を消してから約1年。
短い時間だったが、待っている少女にとっては永遠にも思える時間だった。
レンや結都と過ごした時間は確かに楽しくて充実したものだったが、心の何処かに物足りなさを感じていたのも事実。
その心の隙間は他の誰にも埋められない。
隙間と呼ぶには少々大きすぎる、ぽっかりと空いた穴だった。
「早く、会いたい……」
あの、冷たい体温に触れたい。
他の誰も持っていない、あの暖かさを感じたい。
引きつけてやまない、真っ黒な瞳に見つめられたい。
部屋のなかで少女は、ただただその時を待っていた。