華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
「どうして……?わたしは、こんなに待ってたのに…」
思わず涙が浮かぶ。
頭の何処かで、ああ、涙なんて出るのかと驚きながらも、止められない。
「やっと、やっと、迎えに来てくれたと思ったのに……」
「迎えに来たんだよ。それは間違いじゃない。」
「だったら!どうして…?」
彼がほんの少し困った表情に変わるのはわかったけれど、口に出してしまった。
…もう、あんなところにいたくないのに。
…それよりもっと、彼と一緒にいたいのに…!
「華、本当にもう少しだから。華の次の誕生日にあの家に迎えに行く。そのときは僕と一緒に行こう。華にとって邪魔なものは全て僕が消してあげるから。」
「……………」
「華、お願いだ。本当に、もう少し。」
わたしその、次の、誕生日……
その日に、迎えにきてくれる…。
ーーーーーそれが嘘でも本当でも、わたしに選択肢なんてものは1つしかないのだ。
「…わかりました。次の、誕生日ね…」
つつつ、と涙が零れるのを耐えられなかった。
彼は小さく震えるわたしを抱きしめた。
……ああ、やっぱりこの体温だけは気持ちが良い。
この人は、存在自体がわたしにとっての麻薬みたいなものなんだろう。