華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
記憶4
少女は彼を待ち焦がれていた。
結都の声にも反応を見せず、勉強も手につかなかった。
だから、母親のおかしな行動にも気づくことができなかった。
「…やっと、痣も薄くなってきたわね?」
明日は、少女たちの生まれた日。
彼が、少女を迎えに来る日。
しかし、少女は明日を無事に迎えられそうにはなかった。
「…誰?」
目の前には、屈強な男が2人と、仁王立ちの母親。部屋の奥には父親も見える。上野の姿はなかった。
少女の傍には怯える結都がいた。