華〜ハナ〜Ⅲ【完結】
記憶5‐結都‐
―結都side―
「ただいま、結都。」
「おかえりなさいっ!お父さん、」
ああこれは、幼いころの記憶だ。
俺は、目の前の光景をどこか客観的な視点で見ている。
色素のない金色に近い髪、茶を通り越した黄色っぽい瞳。
これが俺か。
あまり家から出ることもなくほとんどの時間を母親と過ごし、夜、父親が帰ってくるのを楽しみに待っている子供だった。
「今日は、何をして遊んでいたんだ?」
「今日はね、お絵かきをしたよ。お母さんを描いた!」
「ほう、上手いなあ。結都の将来は、画家かな?」
昨日は勉強していたことを褒められて、医者になるんじゃないか?と言われた。
その前は三輪車を乗り回していて、その前は去年買ってもらったサッカーボールで遊んでいたらサッカー選手になれるぞ!と褒められた。
父親はとても優しくて、いつも笑顔だった。
いろんなものを買ってくれて、少しでも興味を示せばなんでもやらせてくれた。
すべて、家の中で、だったが。